茶室は、日本の茶道において、茶事の主人・亭主が客を招き、茶を出してもてなすために造られる空間である。 お茶を飲むという行為を通して日本的感性と芸術性を表現した茶の湯(茶道)が成立し、それとともに発展したのが茶室である。 茶室の構造や意味を理解することで、「茶室は神聖な場所で、その中では皆平等」「亭主の客に対する敬意」など、茶道をする上で重要な茶の湯の精神を理解することができる。 茶室には、平安時代から嗜まれた書院風のものと、桃山時代の千利休により大成された草庵風のものとがある。
茶室の前には露地と呼ばれる庭・空間があり、茶に招かれた客は露地を通り茶室に向かう。 露地には茶室へ続く飛び石があり、その上を渡りながら、植栽やその風情を眺め、蹲(つくばい)で手口を清める。 露地という屋外の自然を経由して、茶室という非日常空間に向かう。 このことが、茶室への一連の所作を面白くしている。
千利休に始まる草庵茶室の最大の特徴の1つが躙口だ。 およそ60〜70センチ四方で、かがんで身を小さくしないと入れない入り口である。 躙口の由来には諸説あるが、客がたとえ格の高い武士であっても躙口を通るには外に刀を置かねばならず、従って茶室とは、茶をもてなす亭主と客が身分を越えて対等な立場となる非日常空間である、とされている。 また、小さな入口を通ることで、茶室という小空間を大きく感じる効果もあるといわれている。
掛物や花などを飾る場所を床という。 客は茶室に入るとまず床の前に進み掛物を楽しむ。 床は床柱、床框、相手柱、落掛で構成するが、こうした部材は趣や由緒のあるもの何年もかけて探して使うことも珍しくない。 床の壁は塗り壁とし、場合によって、片側の壁に墨蹟窓や花明窓といった下地窓をつけ、明かりをとりいれる。床面は畳または板張りである。
亭主が茶事の準備や道具の片付けをする場所。 茶室のなかを見渡しても、何かを収納できるような場所はない。 お茶会で使う道具やお水はどこで準備しているのか? それが、水屋(みずや)と呼ばれる、お茶会の準備をする空間である。 茶器を洗って、拭いて、乾かすまで、この小さい空間で全ての準備が完結する。 水屋は非常に重要で、茶事などを想定して十分な広さを確保することがが望ましい。